第二章 禍津日

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「お前は姿形、気配も人間だ……。だけど、存在が変だ。“向こう側”から見ると別の何かに見える」 ガルンには二つの世界が見える。 こちら側と向こう側……蒼き狼の言う所の精霊界とやらである。 「ほー。その歳で達人……な訳はないな。特殊能力持ちか? それとも特殊な眼の持ち主か?」 グラハトは軽く口笛を吹いた。 看破した事を、心底驚いているように見える。 ガルンが精霊界側から見るグラハトの姿は酷くいびつなモノだ。 人の形をした絶えず流動する、黒い炎の渦のような揺らめき。 蒼き狼とは対照的過ぎる。 「俺は“ある剣技”を識った為に存在が変質してしまった。まあ、異端者見たいなものだ」 頬をポリポリ掻きながら少年の様に笑う。 だが、ガルンにはその笑みすら異質に感じる。 警戒心を全く解かないガルンの様子に、グラハトは小さく溜め息をついた。 「まあ~いいけどな」 そう呟くとカナンの歩き去った方向に足を運ぼうとして、直ぐに足を止めた。 ちらっとガルンを見てから、 「お前、なんで俺に助けれられたと思う?」 と問い掛けた。 「……?」 「お前も俺同様、存在が変質してるからだ」 グラハトはニヤリと笑うとそのまま奥に歩き去った。
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