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「お前は姿形、気配も人間だ……。だけど、存在が変だ。“向こう側”から見ると別の何かに見える」
ガルンには二つの世界が見える。
こちら側と向こう側……蒼き狼の言う所の精霊界とやらである。
「ほー。その歳で達人……な訳はないな。特殊能力持ちか? それとも特殊な眼の持ち主か?」
グラハトは軽く口笛を吹いた。
看破した事を、心底驚いているように見える。
ガルンが精霊界側から見るグラハトの姿は酷くいびつなモノだ。
人の形をした絶えず流動する、黒い炎の渦のような揺らめき。
蒼き狼とは対照的過ぎる。
「俺は“ある剣技”を識った為に存在が変質してしまった。まあ、異端者見たいなものだ」
頬をポリポリ掻きながら少年の様に笑う。
だが、ガルンにはその笑みすら異質に感じる。
警戒心を全く解かないガルンの様子に、グラハトは小さく溜め息をついた。
「まあ~いいけどな」
そう呟くとカナンの歩き去った方向に足を運ぼうとして、直ぐに足を止めた。
ちらっとガルンを見てから、
「お前、なんで俺に助けれられたと思う?」
と問い掛けた。
「……?」
「お前も俺同様、存在が変質してるからだ」
グラハトはニヤリと笑うとそのまま奥に歩き去った。
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