始まり

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母さんとは言っているが、もう何年も逢っていない。 だから、夢の中の人たちの顔は全てぼんやりぼやけている。 カナコ『本、読もう。』 読書に集中していれば嫌なことを忘れていられる。カナコはそうやって誤魔化してきた。 カナコの読む本はファンタジーが多い。自分にはないものを持ち、仲間に支えられ、冒険に溢れているのが羨ましいのだ。 しかし、カナコはその事に気付いていない。 カナコは考えるのをやめているのだ。 全てが無の世界。カナコも無になりかけているのだ。 その時、カナコの手が止まった。一枚の挿絵が目に飛び込んできた。 カナコ『きれい…。』 それは一面タンポポに包まれた丘の絵。カナコはその絵に吸い込まれるように魅せられた。 カナコ『行きたい…。』 無理なのはわかっている。しかし、カナコは想いを募らせる。 そして…。
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