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――俺は一体、どの位もがいて居たのだろう。
明ける事の無い闇の中、
止まない後悔の念と共に。
◇◆◇
週末、人は何を求めてこんなに溢れるのか。
その果てには何が在るのか。
行き倒れ寸前の男はそんな事を漠然と考えながら、繁華街の路地裏に突っ伏して居た。
無論、先の問い掛けに対する答えなんて出やしない。
何故なら、男は自分でも嫌になる程酒臭かったのだ。
つまりは、酔って居た。
それも、相当に。
なんとか重怠い身体を起こし、よれたジャケットの内ポケットを漁る。
ピンクやゴールドの猥雑な名刺、コンビニのレシートに続いて漸く目当てのものが出る。
皺々になった白いパッケージ。
だが残念ながら、中身は空。
「ちっ……はぁ」
男はクシャと捩って、空の煙草箱を投げ捨てた。
冷たいアスファルトに、大の字で身体を投げ出す。
寂れたビルとビルの合間には、今宵の空。
星など見える訳も無かったが、自分の正面である空を男は漫然と見ていた。
「今日は満月、だっけか」
秋が近い事を知らせる様に、頬を掠める風が冷たい。
――このまま自分の身体も冷たくなってしまえば良いのに。
そうしたら、アイツに逢えないだろうか。
「……逢った所で、合わせる顔が無いよなぁ」
男はごろんと身体を横に向けて、膝を抱えた。
その膝は微かに震えている。
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