生徒会長の長い一日 

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  校庭を歩いていると、グラウンドの方に人だかりができているのが目についた。 なんだろうな? とは言うはずがない。 なんたって俺は生徒会長だ。グラウンドで活動しているグループくらいは把握している。 一応様子を見に中等部のグラウンドに近づいてみると、『アジリティ同好会』と書かれた看板が目に入った。 アジリティ同好会は高等部の同好会であるが、設備があまりにも大きいため人気の高い高等部の区画を確保できず、やむを得ず他に使う予定のない中等部グラウンドが割り振られたというわけだ。 ちなみにアジリティとは、犬が障害物をくぐり抜けるタイムと正確性を競うドッグスポーツの一種である。 そんなマイナーすぎる……というか、とても高校の部活ではできないような競技を同好会として認めてしまうのがこのフリーダム端山学園である。 だが、当然アジリティ用の障害物など部費で買えるはずもなく、グラウンドに広がるハードルやトンネルやポールはすべて同好会の手作りらしい。 それにしてはやたら完成度が高いな。 この端山学園には寮もあり、そこには犬が二匹飼育されている。 なんでも、二年前に道に二匹の子犬が捨てられているのを寮生が保護し、世話をしていたらしい。 その寮生達がアジリティ同好会の設立を思い立ち、今はその後輩の寮生達が犬の世話と同好会の活動を続けている。
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