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無駄にカッコつけてそう言うと、吉川は前を向いた。
俺もつられて前を見ると、既に担任が教壇に立ち、出席簿を開いているところだった。
これからHRが始まるため、そこで吉川との会話を打ち切る。
……怖いこと言うなよ。
なんだ?
「夏目さんの仇!!」とかいって背中を刺されでもするのか?
学園のアイドルに反省文を書かせるのはそれほど罪なことなのか?
確かに、俺が夏目ファン(≒全男子生徒)から人気がないのは自覚しているが、まさか仇討ちされる程嫌われることもないだろう。
まぁ、ある程度罵られることは覚悟しておくか。
────────
どうやら、俺の覚悟はある程度では足らなかったようだ。
何故だろう、朝から周りの視線が痛い。
殺気をいたるところから感じる。
体育のサッカーの時間。
何故か俺の顔面にボールが何度も飛んで来た。
俺がボールを取った瞬間、何故か激しいプレイが目立っていた気がする。
味方に足を引っ掛けられたのは何故だ?
昼休み。
購買戦争に参加したが、何故だか今日の兵(つわもの)達には協調性が感じられた。
やたらと肩がぶつかり、足を踏まれたのは確か四十二回。
オールレンジからの肘打ちはマジで勘弁して欲しい。
当然、今日の戦利品は無し。
俺はボロボロになったあげく、手ぶらで購買を撤退することになった。
いつもは吉川と一緒に購買か学食へ行くのだけれど、俺と一緒にいてとばっちりを受けるのを恐れ、一人で食堂へ行ってしまった。
薄情な奴め。
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