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「市川健二」
「……え?」
突然自分の名前を呼ばれ、リーダー格の右側に立っていた少年は疑問の声をあげる。
「高等部一年二組出席番号三番。映像研究部所属。生年月日は1992年10月26日。血液型A型。父親は市川誠45歳保険会社勤務」
「な、なんでそんなこと知って……」
「鈴木佑一。一年二組出席番号十二番。帰宅部。1993年2月5日生まれ。血液型はA型」
「ひっ……!」
今度はリーダー格の左側の少年が声をあげた。
「な……なんなんだよお前!なんでそんなこと知ってんだよ!?」
すると小西は、貼り付けられた笑みを浮かべながら質問に答える。
「どうした?何をそんなに狼狽えてるんだ。俺は生徒会長なんだからそんなことくらい知ってて当然だろ?お前らのことなんて大概知ってるぜ?なぁ、二年五組十七番原田雅之」
原田は激しく動揺した。
いくら生徒会長といえども、生徒全員の名前と出席番号を覚えるなんてできるものなのか……と。
その不気味さに、原田は虚勢を張ることしかできなかった。
「く……そ、それがどうした!こいつが俺たちのことを知ってようと関係無い!やっちまえ!」
原田の指示で、三人が一斉に小西に殴りかかる。
「……しょうがねぇな」
どこか哀しげに、小西は呟いた。
「残念だが、お前達は学園祭に参加できない」
言うや否や、三人の拳は小西を襲う。
そしてあまりにも無防備に、小西は地面に転がった。
「……え?」
三人は困惑した。
おかしい……あっさりすぎる。
すると、小西は地面に手をついたまま哀しげに微笑んだ。
「……お前ら全員、停学だ」
その直後、三人は背後に気配を感じ、ある人物を視界に入れた。
そこに立っていたのは、生徒指導の河原だった。
「お前達!こんなところで何をしている!!」
「先生、忙しいのは分かりますけど、来るのちょっと遅いです」
頬をさすりながら小西は立ち上がる。
いじめにあえば迷わず先生にチクる。
小西幸人はそういう男なのだ。
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