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よく見ると、中に一枚の紙が画びょうで貼られているのに気づいた。
『夏目さんに近づくな』
そして、夏目は理解した。
(そっか、これ私のせいなんだ)
小西が夏目に勝った。
そのことが気に入らない人がたくさんいる。
それで、小西はこんな目に遭わされている。
思えば夏目には思い当たる節がいくつかある。
昨日の昼休みに小西が購買から逃げて来たのも、さっき彼の頬が腫れていたのもそういうことだろうと察しがつく。
夏目の知らないところで他にも何かされていたのかも知れない。
それなのに小西は、それを全く夏目に悟られないようにしていた。
そのことに気付くと、夏目は激しい罪悪感を感じずにはいられなかった。
(私のせいで、小西くんが…)
夏目は一つの決心をした。
(もうこんなことはやめよう。小西くんはこの学園のために毎日がんばってるのに、私のせいで邪魔をするわけにはいかないよ)
そして下駄箱の画びょうと紙を片付け、夏目は靴を履き替えて外に出た。
「ごめんね、小西くん」
その呟きは生徒会室で作業中の小西に聴こえるはずもなく、放課後の喧騒の中にかき消された。
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