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グラウンドでおとなしくお座りしているのがその寮犬、雑種のキングくんとエンペラーくんだ。
雑種のくせに随分と偉そうな名前だな。
いや、決して雑種だからと馬鹿にしてるわけではないが。
……王と皇帝ってどっちが偉いんだ?
しかし、名前の割にはそれほど偉そうな態度でもなく、見た感じとてもお利口そうだ。
二匹だけが俺の存在に気づいたらしく、じっとこちらを見て……いや、ガン見してる。
なんだ?まさか二匹ともマスコットの座でも狙ってるのか?
「それでは、今からキングくんにアジリティの実演をしてもらいま~す!」
同好会員の一人がそう高らかに宣言し、キングくんに指示をして障害物の横を走り出す。
すると、キングくんも走り出し、上手に障害物の中を走り抜けて行く。
これは……すごいんじゃないか?
何の専門知識も持たないはずの高校生の同好会が育てた犬がここまでできるとは。
キングくんの動きは、テレビで見たことのあるそれとほぼ同じように思えた。
キングくんが走り終えると、観衆から拍手喝采が巻き起こる。
「次は、エンペラーくんによるフリスビーキャッチをお見せしてもらいます!」
お、次はフリスビーか。
これも期待できそうだ。
がんばれエンペラーくん!
……て、俺もすっかり観客だな。キツネなのに。
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