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案の定、エンペラーくんはあっさりとフリスビーをキャッチした。
本当に、失敗する気配を微塵も感じさせない。
次は俺の番だ。
俺だって負けてられない。
『それでは、次はハヤ丸君の番です』
同好会員がフリスビーを構えると、俺はいつでも走り出せる姿勢をとって気合いを入れる。
「いけっ、ハヤ丸君!」
掛け声と共にフリスビーが放たれて、俺は全力で駆け出す。
く、速い!
こんなん、人間である俺が追いつけるわけがない。
だが、今の俺はハヤ丸君だ!
「永久不滅のど根性マスコット、ハヤ丸君とは俺のことだあぁぁぁ!!」
青空を駆け抜ける丸い影を目指し、俺は無我夢中で地面を蹴った。
「おお!飛んだ!?」
誰かが感嘆の声を上げた。
「うおぉー!!」
空中で手足をたたみ、風の抵抗を減らす。
意識したわけじゃない。こうすればいいんだと、体が教えてくれているんだ。
そのままフリスビーに向け、思いっきり手を薙ぎ払う。
───パシッ
凄まじい勢いで地面へと降り、砂埃を巻き上げる。
信じられないことに、その手にはしっかりとフリスビーを握っていた。
『成功です!なんとハヤ丸君、本当に成功しました!』
観衆から拍手と歓声が上がった。
「おい、見たかよ?」
「飛んだよ、あの格好で」
「あきらかに人間の動きじゃなかったろ」
「着ぐるみ着てるとは思えないよ」
「さすが生徒会長だ…」
皆が驚いてくれるのは嬉しいが、一番驚いているのは多分俺だ。
そして、一応大事なことなので言っておく。
「俺は生徒会長じゃない、ハヤ丸君だ!中に誰も入っていない!着ぐるみって言うな!!」
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