学園のアイドル

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この学園にはいわゆるアイドル的存在の女生徒がいる。 それがあの夏目 涼だ。 学園のアイドルというと、おしとやかだったり可憐だったりというイメージがあるが、奴は違う。 そもそも顔がすごく良くたって、その顔を見なければ好きになることはない。 全校にファンがつくには、顔や性格が良いだけではいけない。 目立たなければならないんだ。 夏目にはその要素がある。 とにかく目立つ。 というか目立つことばかりしている。 夏目は、中等部の頃から様々な奇行を繰り返している。 初代学園長の像の手足が無いのは夏目の仕業だとか。 中庭の木々を上から見ると「木」という字に並んでいるのも夏目の仕業だとか。 黒板消しクリーナーが各教室に二つずつあるのも夏目のせいだとか。 高等部一年の学園祭の時、放送室を占拠して自分のクラスの宣伝を延々としたりしていた。 去年までやっていた毎週金曜日の校内缶ケリ大会も夏目が主催者だ。 それらは伝説として全校生徒に知れ渡り、夏目のことを知らない生徒はいない。 しかも夏目は、学園のアイドルと呼ばれるに相応しいほどの容姿を持ち合わせている。 十人に夏目は美人かと聞けば、三十人が夏目は美少女だと叫ぶくらいだ。 そんなわけで夏目にはファンが多い。 純粋に容姿に惚れた男共が多いが、彼女の作る破天荒な伝説に期待している生徒も少なくはない。 生徒会長の俺としてはいい迷惑だけどな。 今や俺と夏目は好敵手であり、奴が何かしでかす度に俺は走る。 今年になってからはそんな俺と夏目の闘いを見て楽しむ輩が増え、この学園の名物となりつつある。
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