生徒会長の長い一日 

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  「ごめんねぇ、会長さん。もう終わらせるからね。ほら、起きてぇ」 そんなこと言われても今の俺はそう簡単に動くことはできない。 いつまでもグダグダしてるお前らが悪いんだからな。 俺は知らん。 「ほら、俺達が悪かったからさ。真面目にやるから。頼むから起きてくれよ幸人~」 「ん……無理」 動かなきゃ駄目だとわかっていても、どうしても机から顔を上げることができない。 この状態になった時はいつもどうやって打開してたっけ? あ~もう、考えんのもめんどい。 「ねぇ、これどうすんの?このままじゃ私達まで帰れないよ~」 「もうい~じゃん。どうせ打ち合わせなんてこないだ決めたことの確認だろ?てきと~にして帰ろ~ぜ」 「そうするしかないかな。よし、じゃあ野々村、そこの書類取って」 こんな時だけ便りになる副会長吉川様が重い腰を上げた瞬間、またアレが聞こえて来た。 『ピンポンパンポーン』 な……放送だと!? 「馬鹿な!放送室の鍵は確かにここに!!」 俺は身を起こし、壁に掛けてある放送室の鍵を確認する。 「あ、起きた」 「なんだ、へたれモードでも動けんじゃん」 ある。確かに放送室の鍵は生徒会室に保管してある。 『こんな時間まで残っている皆さん、ご苦労様です!本日も、夏目涼による放送ジャックの時間がやって参りました。放送室の鍵は生徒会室にあるからと安心している生徒会長さん。甘いですねっ。塩と砂糖を間違えて作った鯛の塩釜焼きくらい甘いですっ!今は学園祭中なので、グラウンドのマイクからも放送はできるのですよ』 そうか、その手があったか! 疲れ過ぎて油断していた。 確かに、言われてみれば最初のピンポンパンポーンは夏目の声だったな。 またもしてやられたことに悔しがると共に、どうやら完全復活したらしい夏目の声に安心もしていた。 ていうか、砂糖で作ったら既に塩釜焼きじゃないだろ。
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