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「こうしちゃいられない。打ち合わせは頼んだぞ!俺は奴を止める!」
吉川にそう告げると、俺は窓から外へと飛び出した。
へたれモードなんて知ったこっちゃない。
校庭を目指し地面を蹴り進むごとに、俺の高揚感は高まっていく。
グラウンドへ向かう途中も、夏目の放送は続いていた。
『今回も見事放送を乗っ取っちゃったわけですが、実は特別何かをしようというわけではありません。今日はある宣言をするためだけに、この場をお借りしました』
借りたんじゃなくて奪ったんだろうが。
『私、夏目涼はっ!私のクラス、高等部二年六組がこの端山祭で売り上げ一位になることを宣言しますっ!!去年はどっかの誰かさんにしてやられたけど、今年こそは!必ず一位になってみせます!……ということでみなさん、二年六組のおにぎり屋さんに是非来てねっ!私も頑張っておいしいおにぎりを握りま~す!』
途端、学園中から歓声が上がった。
残っている生徒は少ないはずなのに。
ついに伝説復活だとか、女神再臨だとかいう騒び声が聴こえる。
そうか。そういや、俺が夏目に勝ったっきり夏目はまだ何もしてないんだよな。
今か今かと待ちわびていた奴等が喜ぶのも無理はない。
「よぉ、伝説の女神さん。逢いたかったぞ」
俺はようやくグラウンドの特設ステージに到着し、その少女の後ろ姿を見上げた。
「今回は伝説はやらないのか?」
背中に向かって言うと、夕陽の中、ステージに一人で立っていた夏目はこちらを振り向いた。
「伝説だよっ。生徒会長に勝つことで、これから伝説になるんだよ」
今日の一件で、夏目だけでなく俺までもが伝説扱いされるようになった。
つまりこれからは勝った方が伝説。
この一位宣言は、俺への挑戦でもあるってわけだ。
「いきなり勝利宣言か。面白い、その勝負乗ってやる!ならば俺も明日の朝、全校生徒に宣言してやる。二年二組のアイスクリーム屋が一位になるってなぁ!!」
明日、売り上げ一位になった方の勝ち。
それが次の勝負だ。
「そうこなくっちゃっ!それじゃ、明日の勝負楽しみにしてるからねっ」
そう言うと、夏目はステージから下り、校舎の方へと駆けて行った。
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