学園祭の闘い

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俺はその襲撃者を見据える。 ピンと立った耳。長毛で茶と焦げ茶の混ざった毛並み。牧羊犬の面影を感じさせる雑種の中型犬。 そこに立っていたのは、端山学園の寮に住む兄弟犬の弟(推定)だった。 「一体何のつもりだ?エンペラーくん」 当然、俺の言葉が解るはずもなく、エンペラーくんは放送室の鍵をくわえたまま、じっとこちらを見つめていた。 「フフフ……油断したな、ハヤ丸君」 振り向くと、そこには昨日エンペラーくんにフリスビーキャッチの指示を出していたアジリティ同好会長の竹森が立っていた。 「何が目的だ?俺は今忙しいんだが」 「すまんね。あんたががんばってるのは知ってるんだけどさ、ちょっとある人から頼まれててね。せっかくだ、昨日の勝負の決着をつけようじゃないか」 なるほど、ある人……ね。 駄目だ、心当たりが多すぎる! 「確かに、俺も昨日の勝負がつかなかったのは気がかりではあったが」 「じゃ、あの鍵を取り返すことができたらあんたの勝ちだ。いくぞ、エンペラー!」 竹森は勝手に話を進め、エンペラーくんに指示を出す。 「エスケープッ!!」 竹森がそう叫んだ途端、エンペラーくんは疾風の如く走り去った。  放送室の鍵を、くわえたまま。 「っていきなりかよ!?」 てか、エスケープって!? そんなアバウトな指示で大丈夫なのか!? さ、さすがはアジリティ同好会。しっかりと訓練されているんだな。 すでにエンペラーくんの姿は見えなくなり、完璧な逃走(エスケープ)を遂げていた。 てかこれ、追わなきゃいけないの? ……ちっ、しょうがない。 鍵を奪われたままにするわけにはいかないし。 何より、昨日の決着をつけなくてはならない。 勝負は負けなければいいんじゃない。 勝つために全力を尽くし合う。 それが勝負だ! 「俺の脚力、なめんなよ犬っころ!」 俺は負けない。 夏目に勝つと誓ったんだ。 犬になんて負けてられるか。 俺は全速力でエンペラーくんの後を追った。
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