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ふぅー。
あれは……講堂だな。
確か、講堂の近くまで逃げれば良いってボスが言ってたはずだ。
よし、もう少しでオレの勝ちだ。
楽勝だぜー!
「──そこまでだ!」
な、何だ……上?
───ズドン!
「キャウンッ!」
び、びっくりした~。
まさか、空からキツネが降ってくるとはな。
そうか。オレは負けたのか。
姿が見えねぇと思ったらあのキツネ、建物の中を走ってやがったのか。
二階から飛びかかってくるなんて、なんつー野郎だよ。
「くぅ~ん」
負けたよ、オレの負けだ。
ほら、この鍵を持っていくがいいさ。
「なんだ、意外と素直じゃないかエンペラーくん。よしよし、お前はよくがんばったさ。お疲れさん」
すまねぇボス。
オレ、負けちまったよ。
けど、こいつ結構いい奴だ。
こいつになら、負けちまってもしょうがねぇよな?
───ピィー!
は、この笛の音は!?
─────
どこからともなく笛の音が響く。
「おわっ!……と」
笛の音を聞いた途端、俺に負けてうなだれていたエンペラーくんはすくっと起き上がり、姿勢を正した。
今度はなんだ?
なんか発動するのか?
俺が身構えていると、どこからともなくもう一匹の寮犬、キングくんが駆け寄って来た。
「キング!エンペラー!そいつを捕らえろ!」
刹那、俺の両足に二匹の犬がしがみついた。
「な、なんだ!?なんなんだこれは!」
パニックに陥る俺。
犬くらい振り払えなくもないが、動物愛護を掲げる俺としては、この愛らしいわんちゃん達を傷つけることはできない。
要するに、今の俺は身動きが取れない。
まさか、これは……
「今だ!かかれぇ!!」
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