14606人が本棚に入れています
本棚に追加
/226ページ
─────
「──幸人!起きろ!」
「う……んん……」
目を開けると、まず目に入ったのは輝く眼鏡フレームだった。
ああ、なんだ吉川か。
「よかった。無事に目覚めたな」
「……おはよ」
とりあえず、指をチョキに構え、それを吉川の目へと差し込んだ。
「……てっ、何すんだ!?眼鏡に指紋をつけるんじゃねぇ!」
チッ、これだから眼鏡っ子は。
「それで……ここはどこだ?」
あんなことがあったというのに、何故か俺は落ち着いていて、冷静に周りを見渡す余裕があった。
どうやらどこかの倉庫のようなところらしいな。
室内では吉川の他に、田中さんを含めたクラスの男女数人がこちらを見つめていた。
ニヤニヤと笑っている奴もいれば、呆然と俺の顔に見入っている奴もいる。
何なんだ?俺の顔がそんなにおかしいのか?
「可憐だ」
男子生徒の一人が呟いた。
「は?カレンダー?」
「幸人。とにかく今は時間が無い。驚かず、冷静に聞いてくれ」
吉川は唐突に俺の肩を掴み、今の状況を話し始めた。
「幸人、ここは講堂の中の倉庫だ。控え室はミスコンの参加者がいて使えないから、ここで準備を終えた」
講堂の中だったのか。
さすがにこんな部屋までは入ったことがなかった。
て……え、準備って?
「幸人言ってたよな、ミスコン参加者にうちのクラスの宣伝をしてもらいたいって。今回特別に、十六人目としてうちのクラスから参加できることになったんだ」
ほう、そうか。吉川がミスコン部と交渉してくれたのか。
さすがは副会長様だ。
「で、その参加者ってのは誰だ?田中さんか?」
「この人さ」
そう言って吉川は俺に手鏡を差し出した。
周りの生徒達は何故か噴き出したり笑いをこらえたりしている。
まさか……はは、まさかまさか。
最初のコメントを投稿しよう!