第一章:語りにて騙る

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「いやいや、中々に美味じゃないか。この海老のぷりぷり感はたまらないし、かけられたオレンジ色のソースも、その酸味が全体の味をより良くさせている。点数をつけるならば――」 「カタるねえ、語り屋」 「……」 今の、『カタる』と言う言葉は。 果たしてどういう意図で使ったのかな、お嬢さん? 「お前もつまんねえ味だと思ってんだろう?」 「いやいや、何を言うか。俺は確かに美味だと思うし――」 「クックック……。『嘘をつかない』のが得意だね、語り屋。お前は確かにこの料理を美味だと思っているかもしれないが、つまんねえ味と言う言葉、『それそのものはまだ否定していない』な?」 「……」 チッ。 よく理解しているね、あんたは。 『カタる』って事を、ようく理解している。 「ああ、忘れてた。あんた、読心術が得意なんだったな」 「忘れてた?ほんの数分前に話したことくらい、覚えておいてくれよ」 「おうけい、おうけい。そうさせてもらうよ」 パクリと、先程そのぷりぷり感を賞賛した海老を咀嚼しつつ、俺は目の前のこの女に対して思考を働かせる。 読心術、か。 全く、参ったね。 ――全然、役に立ってないじゃないか。
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