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「いやいや、中々に美味じゃないか。この海老のぷりぷり感はたまらないし、かけられたオレンジ色のソースも、その酸味が全体の味をより良くさせている。点数をつけるならば――」
「カタるねえ、語り屋」
「……」
今の、『カタる』と言う言葉は。
果たしてどういう意図で使ったのかな、お嬢さん?
「お前もつまんねえ味だと思ってんだろう?」
「いやいや、何を言うか。俺は確かに美味だと思うし――」
「クックック……。『嘘をつかない』のが得意だね、語り屋。お前は確かにこの料理を美味だと思っているかもしれないが、つまんねえ味と言う言葉、『それそのものはまだ否定していない』な?」
「……」
チッ。
よく理解しているね、あんたは。
『カタる』って事を、ようく理解している。
「ああ、忘れてた。あんた、読心術が得意なんだったな」
「忘れてた?ほんの数分前に話したことくらい、覚えておいてくれよ」
「おうけい、おうけい。そうさせてもらうよ」
パクリと、先程そのぷりぷり感を賞賛した海老を咀嚼しつつ、俺は目の前のこの女に対して思考を働かせる。
読心術、か。
全く、参ったね。
――全然、役に立ってないじゃないか。
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