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――船の中はその外観同様、有り得ないほどに豪華だった。
まずは天井。
薔薇を象ったガラス細工に覆われた電球が、均等に並べられている。
十字路に差し掛かると、まさかのシャンデリアだ。
本物のシャンデリアを生で見るのなんて何年振りだろうか?
そして通路の壁には、何だか高価そうな絵画。
床にはこれまた高価そうな赤い絨毯が敷かれている。
全体的に洋風な雰囲気の漂う内装。
いや、それは外観からとっくにわかりきっていたことだが。
「では、瀬茄さまの部屋は此方を」
南斗 孝子に巨大な船の中を案内されること十数分、連れてこられたのはスイートルームを彷彿とさせる豪華な個室。
一人用と銘打たれている、どう見たって2人は軽く並んで寝れそうなベッドは、見た目が既にふかふかである。
見ているだけで眠くなる。
やばい。俺、四日と言わず一生この部屋で過ごしたい。
「それではごゆるりと。恵さまは此方になります」
言って、彼は俺に金色の鍵を手渡すと、俺の後ろに隠れるようについてきていた恵に笑顔で振り返る。
そうして、俺の部屋の向かい側の扉を指し、また金色の鍵を手渡した。
「食事は三食ご自由に。ただ旅の間の三回の夜には、互いの親交を深める軽い催し物をご用意しております。午後八時より大広間にて行われますので、その際にはお集まりください」
南斗 孝子は俺たちにそれだけ告げると、再び和やかな笑みを向けて、ささっとその場から去っていった。
俺はそれを見送り、彼の姿が完全に見えなくなったところで静かに口を開いた。
「……隙がないねえ、彼」
「……そういう人、なんですよ」
笑顔の下に、幾つもの感情と思考が詰め込まれている。
決して他人には悟らせない、厚い仮面。
まあ、別にただそれだけのことである。
悪意や、謀を巡らせている様な感じはない。
単なる、南斗 孝子と言う人間分析。
「手こずるかねえ」
「どうでしょうね」
俺は小さくため息をつくと、開いていた部屋の扉に手をかける。
「ま、とりあえず荷物置こうぜ」
「はい」
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