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――100人単位の人間は軽く収まりそうな広さに、丁寧な装飾を施された木造のテーブル。
大理石のタイルに、中心に置かれた小さな噴水。
壁際のテーブルにはそれぞれ窓が一つ用意されていて、そこからは絶景の青い海を眺めることが出来る。
俺が10分の時間をかけて自室から歩いてやってきたレストランは、これ以上とないほどに申し分のないものだった。
「それで、お前は注文どうするんだ?」
そんな、どこにだって座る場所はあるだろうそのレストランの数多あるテーブルの中。
俺はわざわざ既に一人の女性が腰掛けていたテーブルの、その真正面に腰を降ろしていた。
「まだ決まってない。決まってるなら先に注文していいぞ」
「いやいや、私もお前が決まるまでは待つとするさ」
やや赤みのかかった長い髪。
長いまつげに、鋭い目つき。
上には赤いコートを羽織り、下は黒いジーパンを履いている。
そんな、とにかく人目につきやすいことこの上ない姿をしているこの女性。
名を、天美 翠(あまみ すい)。
苗字からわかるとおり、部外者の1人だ。
なんで俺がその彼女の目の前に座っているか。答えは簡単、誘われたからだ。
俺がこのレストランにやってきた丁度その瞬間、俺は既にテーブルに座っていた彼女に声をかけられ、強制的にその目の前に座らせられたのである。
お互い自己紹介をした後は、早速『お前』呼ばわりしてきやがる、何ともアウトローな女性だ。正直、苦手なタイプではある。
「……ん、よし。決まった」
俺はテーブルに直接広げて眺めていたメニューをパタンと閉じると、そう呟いて視線を彼女へ向ける。
「ほう……」
すると、彼女は意味深に微笑み。
「じゃ、わかった。店員を呼ぶとしよう」
そう言って、右手を高々と掲げ、「おーい」と声を上げた。
……行動一つ一つが、いまいちスマートじゃない。
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