小さな部屋

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事の始まりは一ヶ月ほど前だった…、 俺はいつものように仕事を終え、家路を歩いていた…。 いつもと変わらない街並み、 いつもと変わらない人込み、 いつもと変わらない自分…、 とにかくいつも通りだった。 何も変わらない…、 何も変わってはいない…、 何も変わってはいないはず…なのだが…、 何かが違う…。 何か見たことの無いもの、 いや…、見たことはある。 というよりもよく知っている…。 なのに何か違うものが、明らかに俺のそばにあった。 何か…、 俺では気がつくことも出来ない何か…、 よく知っていて全く知らないもの…、 何かは解らないが…、 何か恐ろしいものがいる…。 …という妄想を膨らましながら歩いていた。 俺は薄ら笑いを浮かべる。 あまりに出来の悪いホラー、 もう少し面白い想像は出来ないものかと思わず落胆した。 しかし…、 「ん…?」 「嘘から出たまこと」とでも言うべきか、 驚くほどの偶然…、 今この瞬間、反対側の歩道には俺にとって「よく知っていて全く知らないもの」が存在していた…。
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