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…俺…?
それに気がついたとき、すでに「それ」は「俺」を通り過ぎていた…。
今…、いやすでにさっきなのだが、俺と俺がすれ違った…。
こっちの俺は向こうの俺を見つめ、
向こうの俺もこっちの俺を見つめた…。
しかしお互いの足が止まる事は無く、あっけなく二人の俺は通り過ぎてしまった…。
何かの見間違い…、
それとも目の錯覚だろうか…?
明らかに存在したその「俺」は間違いなく「俺」だったのだ…。
俺は今更と言うほど遅くに驚き、目をこすった。
しかしもちろん辺りの景色など変わるはずも無く、俺の周りはせわしなく動いている…。
しかしその日を堺に、明らかに「それ」は俺の日常に溶け込んできた…。
駅のホーム、
会社近くの古本屋、
自宅脇の公園…、
俺の立ち寄るあらゆる場所に「俺」は現れた…。
もしかしたら俺に酷似する人間がいるのかもしれない…、
だとすれば俺は、自らの顔と他人の顔の区別がつかないことになってしまう…。
そんな馬鹿な…。
自分のことは誰よりも知っているはずだ…、
顔だって鏡で毎日見てるし…、
そんなはずが無い…。
しかし、そうだとしたら…。あれは何なのだろうか…?
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