善意からの悪戯?豊玉の姿

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それを聞いた三人の瞳が剣呑そうに光った。 「おい、それって仕事に関わるもんじゃねぇよな?」 永倉が声をひそめて聞いてくる。 壱帷はこくりと頷いた。 「その点については問題ありませんよ。土方さん個人の物です」 それを聞いてほっとした永倉は肩の力を抜く。 それから後ろ頭をかきながら記憶を探った。 「やっぱ見覚えねぇなー」 「同じく」 「……」 三人共に同じ答えが返ってくる。 そう返ってくるだろうと察しがついていた壱帷は「そうですか」と冷たく返した。 そんな壱帷達の様子を屋根の上から楽しそうに見ている者がいた。 その人物の膝には一冊の本が置かれている。 「あっはは……考えてる考えてる。面白いなー、ねぇ?原田さん」 隣でうんざりした表情をしている原田に問いかける。 原田は表情を歪めて瞬きをしたあと、問いかけ主の顔を見た。 「沖田よ、悪戯をするのは勝手なんだが、何故おいらも巻き添えくらってんだ?」 嬉しそうに笑みを浮かべていた沖田に問いかける。 沖田は原田の鼻先に指をつきつけた。 「そりゃあ勿論、君が嘘をつくのがド下手くそだからだよ」
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