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長州―――松下村塾…
「私は此処から出てくぞ高杉!」
一つの叫び声が響いた。
その後にバシン!と襖が叩かれた音がし、廊下を叩く音が鳴る。
「まっ!待て壱!落ち着けよ!」
「何をどう落ち着けってんだ!」
そんな騒を聞いた二人の青年がいた。
次第に音が大きくなるのを聞き、内、一人が己等がいる室の襖を一尺程開く。
「おい栄太ー…」
見る気でいる青年を、髷を結った――前髪の長い青年が咎めた。
栄太は意地悪く鼻で笑うだけで、これから起こるであろう事を待った。
すると影が現れる。
「こんな所はもうまっぴらだ!出てくぞ!」
「何時まで意地はる気だ」
スッ―と通り過ぎたのは少年と青年。
それが見えたのも一瞬。
栄太の目には、激しく動いた少年の後ろ髪が目に焼き付く。
「今回ばかりはお前が悪い!いい加減慣れろよ!」
「慣れる気など更々ない!好む気もあまかわ程もない!」
消えた筈の方からまた二人が現れた。
少年の手には身長に合わない紫柄の刀が握られていた。
それよりも、青年の派手な色合いの着物の方が目についた。
と、また通り過ぎる。
栄太は喉を鳴らした。
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