長州より、桜木壱帷の暴走

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* 壱帷は死を覚悟した。 浅はかにもタンカを切って一年余り。 アテのない壱帷にとって、ただ生きる為の事にすら、行動が出来ない位衰弱していた。 山道の大きな桜の木におっかかって、もう2日が過ぎた。 元からあった金など無いに等しい物だった。 金稼ぎには、用心棒をするつもりでいたが、自分の細っこい体つきを見て周りには相手にされず。 けれど、どうしても汚い事には手を染めたくはなかった。 そこまで落ちたくはなかった。 けれど、周りは容赦なく牙を向けてくる。 殺されかけたし、盗まれかけたし。 一人で生きる事が、どれほど大変な事かを思わされた。 それでも…。 壱帷は唇を噛んだ。 嫌だ。 アイツに負けたくない。 生きたい。 死にたくない。 「ほらよ」 突然握り飯が目の前に現れた。 脅え、警戒して顔をあげると、直ぐ前で男性がしゃがんでいた。 にんまりと笑って、飯と水を差し出す。 「食えよ。大丈夫さ、毒はねぇ」 そう言って男性は壱帷に飯を押し付けた。 そして何故か正面に腰を下ろす。 壱帷は飛燕を握って男性を睨みつけた。 男性の腰にも、得物があったからだ。
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