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「いい加減にしろよ!お前がどれほど心配かけたか分かってんのか!?」
「心配も迷惑も知るか!邪魔すんな!牛!」
「牛だぁあ!?」
また通り過ぎた時には少年が風呂敷を持っていた。
で、また遠のく――。
それよりもツボに入ったのが“牛”。
何時だったか先生が彼に…高杉晋作に言っていた“放れ牛”だ。
栄太は堪えられず、口を両手で押さえる。
青年はため息をついた。
「先生はお前の事を思って!」
「要らん事だ!」
「お前の事を大切にしてる!」
「して欲しくねぇって言ってんだ!」
室の前で止まり、高杉に向き少年は襖を叩いた。
自分がおっかかっていた襖を叩かれた栄太は、煩わし気に眉を寄せる。
そして襖を大きく開いた。
「世話をされ育ててくれても、“勝手な事”で終らせるか…」
栄太は態々立ち、少年を見下ろした。
少年は鋭く栄太を睨みつける。
「座って言えよ」
「貴公を見上げなきゃいけないなんて死んでもヤダ」
そう言って栄太は自分の肩ぐらいの位置にある少年の頭のつむじを押した。
少年はそれを瞬時に払い除ける。
「私は親を殺した様な奴の側に何時までもいたくない!」
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