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そう怒鳴りつけたが、そのすぐ後の栄太の顔を見て震えた。
「暴言だね。幾ら貴公とて、先生の侮蔑は許さないよ桜木」
冷たい刺すような目力。
これが彼、吉田栄太郎の本当の瞳。
普段の他人行儀な微笑よりもずっと、らしい。
少年は引きつった笑みを浮かべた。
「ソッチのがらしくて良いぞ吉田」
「貴公に褒められると寒気がする」
また少年曰く他人行儀の顔になって言う。
少年は吉田を睨みつけた。
「して?どうする気だい?一人飛び出して生きてける程今の世の中平和じゃないよ。最悪斬られるか売られるか」
「飛燕がある」
ムキになって少年は紫柄の刀を突き出した。
少年は両親に殺されかけた。
それを助けるがため、両親を斬り捨てたのが皆の言う先生。
吉田松陰。
「親になら斬られても良かったと思っていたんだ」
歯がゆそうに吐いた。
「時にー、今回はまた何でこう言う事になったのか我々に教えてくれー」
こう言う事とは、出てく宣言の事だろう。
確かに少年は今までに何度も先生に反発してきた。
けれど出てくとは一度も言った事はない。
少年はため息をつき、聞いてきた青年、桂小五郎を見た。
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