プロローグ~塔京の街にサヨナラを

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「8時18分19秒、学校に到着。セーフセーフ危なかったー」 この学校は画期的なことに8時20分になると不審者対策のために自動的に表門が閉まってしまうのである。 学校に入るためには職員玄関か来客用入口を利用するしかない。 さらに、職員玄関は職員室の前を、来客用入口は校長室の前を通らないとホームルームへ行くことは不可能。 確かに、不審者対策にはなるだろうが、不審者よりもむしろ遅刻者を捕まえるためのシステムとしか考えられない。 実際、検挙者は、不審者よりも遅刻者のほうが圧倒的に多い 全く、いい迷惑である。 8時21分30秒31秒‥‥ 「あっ、ヤバい。1時限目が始まっちゃう」 1時限目は生物学基礎である。 教授が神経系の反応について講義をしている。 「‥‥‥‥であるから、脊椎を通り‥‥」 8時50分30秒31秒32‥‥ 「はぁ、まだ半分もたってない」 「‥‥‥‥よって、運動神経が‥‥」 8時56分18秒17秒16秒15‥‥ 「ん?今確かに‥‥」 続く筈の言葉を飲込んだ。 「時計が逆進する筈がない」当たり前だ。 8時56分30秒31秒32‥‥ 「やっぱり、気のせいだ。疲れてるのかな?」 この異常を気に止めるべきだったのだ。 『異常は、なってからでは遅い』 この日、私が学んだ全てがそこに集約されたのである。 サァ、夢ヲミマショウ。ハテシナクツヅク夢ノモノガタリヲ‥‥。 サァ、神ノリョウイキヘノ鍵ヲアタエヨウ。 人タルモノガミルコトノデキヌセカイヘト‥‥。
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