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「で、繋ったっていうのは?」
先に話を切り出したのは、信じられないことに私自身だった。
「ハイ、私達ノ力デハ、アナタガタノ世界ノ中ノ、ホンノ1点シカツナゲルコトガデキナイ。ツナガッタノガアナタノスムチイキ。塔京ノ街‥‥」
声はもとの雰囲気を取戻していた。
とはいってもアクセントが完璧な機械って感じだけど‥‥
「ふーん、そんで私が選ばれたのか。でもね、私、そんなに強くないよ。普通の‥‥特別なことのない、平凡な人間‥‥」
そう、どこにでもいるような平凡な‥‥弱い人間‥‥。
『淋しさにのまれるのは誰だって同じ。ただ、それに気付きどうすればいいのか、それが一番大切なのだ。君は一人暮らしをする際に‥‥』
急に知らない声がした。
「誰?」
『おっと、失礼。自己紹介がまだだったね。私の名前はシンシア。今まで話していてくれたのはアリシア』
唐突に現われたこの声の主は女性らしい。
若いというより幼い感じのする、機械的ではない人間味のする声だった。
やっと、話が通じそうな気がする相手が現われた。
「繋ったっていうのはどういう意味?助けて欲しいっていうのはどういう意味?」
『何故、自分が選ばれたのか?』よりも先にこの質問を切り出したのか、私は不思議だった。
『今、あなた方の世界で、神隠しにあったり、原因不明の昏睡状態が続いている方はいらっしゃいませんか?』
「‥‥分からない‥‥」
そんな話、聞いたことない。
第一、神隠しはともかく、原因不明の昏睡状態なんて言うのは、全国で何件もあるだろう。
何件もあるならば、全国的なニュースにも取り上げられていないだろう。
『そうですか‥‥。では、ご説明致しましょう。この世界――アルカナについて‥‥』
わたしは、禁忌に触れてしまったのかもしれない。
決して元に戻すことのできない禁忌に‥‥‥‥。
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