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別に特別可愛い、つーわけでもなくて、頭がいいってわけでもなく、運動もできる…いや、これは当てはまらないだろう。
こんな、平凡な女がオレを悩ませる。
高瀬優紀
コイツはすんげー平凡で、すんげータイプじゃない。
でも、いつのまにか好きになってた。
平凡のくせして…好きなやつがいて、付き合ってて、別れて。
未だにそれを引きずってる。
ほら、オレと二人っきりなのに高瀬は外で部活してる泉の姿を窓越しで眺めてる。
「高瀬、早くやれよな。オレ早く部活行かなきゃなンねェんだよ。」
「…………………」
「…高瀬?」
今の高瀬にはオレの言葉なんて耳に入ってないだろう。いや、きっとオレの存在すら消えてるんだろう。
高瀬は泉の姿を微笑みながら眺めていた
「高瀬!!」
「うわぁ!」
びくっ、と体を震わせ「何?」と言いたげに眉をひそめ、オレを見つめる。
「…手ェ、とまってる」
「え、…何してたっけ?」
「委員会のめーぼ作り」
オレははぁ、と溜め息まじりに呟く。
コイツは恐ろしい。一緒に作業をしてるのにそれさえ忘れてたかのような雰囲気を醸し出す。そして「何してたっけ?」を真顔で問い掛けるから恐ろしくてたまらない。
それほど、泉に夢中なんだ。
なんて今更ながら実感する。
叶わない、届かない、触れられない。
「…阿部?」
高瀬は心配そうな表情を浮かべ、オレの表情を伺う。
「…なンもねェ」
「ごめん、私がぼーっとしてるからだよ、ね」
もう一度「ごめん」と謝るとしゅん、と肩を落とす高瀬。
許したくない、許せない。
でもきっとオレのことだから許してしまうのだろう。
でもそんなのもう嫌だ。
だから、
だから…
もう戻れなくしよう。
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