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「あのね…私、田島君が好き」
一瞬何を言っているかがわからなかった。世界に色がなくなった。しかしはっと気付けば前には水樹がいる。そして現実に引き戻される。…田島が、好き?あの田島が?…そりゃ水樹と田島は同じクラスだけど、…わけわかんねぇ。
「でもね、田島君、好きな子いるらしいの。私、どうすればいいかわからないよ…」
小さく声をあげて泣く水樹を俺は反射的に抱き締めていた。そして、しみじみとコイツが抱き締めて欲しいのは田島なんだな、と感じた。俺はコイツのこと、好きなのに。もう届かないんだな。そう思うと情けなくなってきて、自然と涙が出てきた。そしてぎゅっと力をいれて抱き締め、
「大丈夫だ。心配すんなって」
と耳元で囁いた。
コイツを幸せにできるのは俺じゃないと痛恨した日。しかし俺は悔やまなかった。俺の幸せはコイツの幸せ。だから精一杯コイツの応援をしてやろうと、そう思った。
*END*
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