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苦悩1
身体が熱を保つ
身体が疼きだす
僅かな月の明かりが窓から差し込む薄暗い部屋の片隅に置かれたベッドの中に黒髪の若い男が寝ている。華奢な体付きの上半身をシーツから晒して、トランクス一枚を身につけて眠りに浸いていた。
しかし、もぞもぞと身動きをして、寝呆けながらイリスは目を覚ました。
首元が熱く感じられた。名前が焼き付けられた場所を手で撫でる。
その途端、身体の中心が熱を発するのが分かった。
息が苦しくなる、自然に両手が履いているトランクスを下げる。
イリスは目を閉じて、赤面した顔を枕に押しつける。熱くなって堅さを増す自身を両手で握り、しごき始める。堪らず小声を零しながら、唇を噛み締めて荒くなる息使いに脳が麻痺するような感覚に陥っていた。
「くそっ…あの野郎…」
次第に汗が浮き出てくるのが分かる。毎晩のように美しき悪魔に嬲られている身体は、奴が現れない日にも発情してしまう。その度に、イリスは自己処理をしなければ熱は冷めず、苦しいだけということが分かっている。
…お前は私なしでは生きられない身体にしてやる…
「ハァ…アッ…こんな身体にしやがって…」
脳裏に奴の言葉が浮かぶ。言葉通りこの身体は悪魔を受け入れ始めている。一週間も放置が続くとすでにイリスには屈辱の日々だった。
汗ばんだ身体を丸めて、湿った髪をシーツに押しつけた。先端から溢れるぬるぬるとした体液で自然に手を速めていき、背筋に悪寒を感じ始めた。
ようやく、絶頂が近づいてくると、身体が痙攣を起こして脳が働かなくなり、堪えていた声を発して唇から唾液を垂らしいた。
「ずいぶんな言い方だな…」
その時、聞き覚えのある男の声が部屋に響いた。
薄暗い部屋の中で相手の姿は闇に埋もれて分からないが自分の近くにいる。
「ハッ…ァ…何しにきた…?」
イリスは、シーツを握り締めて身を隠すと、辺りを見渡してみたが明かり一つ無い部屋の中では居場所すら分からなかった。
「何しに?…分かっているだろう…」
男からは自分が見えているのか、笑いを浮かべて話しているのが把握できる。
「俺をこんな…にしてただじゃ済まさない…」
耳に入る男の低い声に身体が再び熱を保ちだす。
胸が締め付けられ、息が荒くなる。
それを気付かれないようにイリスは強い口調で男に文句をぶつけた。
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