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次の日悠がいつもの時間に起きると、すでに茉莉子は出掛けたあとだった。
ベッドの中で玄関のドアが絞まる音を聞いたが、やっぱり寂しい。
朝食の無い朝はここに来て、初めてだった。
「おかえり…。」
悠が昼寝から目覚めると茉莉子がキッチンに立っていた。
いつものことがホッとさせる。
茉莉子は悠に目をやってから何も言わず、作業を続ける。
「昨日は、本当、悪かった…。」
「朝ご飯。食べなかったの?昼も。」
「うん。」
「…お腹空かないの?」
「いや、別に、…何?」
茉莉子に見られている事に耐え切れず聞く。
「今朝、いつもより早く行かなきゃいけなくて、作れなかったから。言うの忘れてて…。」
「…怒ってるんじゃないの?」
「もう、それはどうでもいいです。考えないことにしたから。」
「……。そう……。」
悠は静かにテーブルについた。
寂しくなる。
「茉莉子ちゃん、今日合コン来ない?」
大学で友達に誘われる。
「ごめん。」
「お願い!人欲しいんだよー。ね?」
「気分転換になると思うし。行こ?」
「……聞いてみる……。」
「え?誰に…?」
友達の疑問の声には答えず、ケータイを耳にあてる。
自宅電にかける。
『はい。佐藤です。』
「あ、茉莉子です。」
『はい…。』
「今日遅くなってもいいですか?」
『どのくらい?』
茉莉子は友達を見る。
「12時には帰ります。」
『分かった。…何かあったの?』
「ううん。合コンに誘われたから。」
『…。』
悠は電話の前でうろたえる。
「じゃあ。」
『迎えいくよっ。どこ?』
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