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修司の部屋を片付けなければいけない。 引っ越さなければ一人分には広い。家賃も払えない。片付けなければ。 心の中で処理するよりも先に修司の居た証拠を処理しなければいけなくて。心が追い付いてこない。 修司が死んだって頭で心で理解するより先に周りがそれに慣れていく。追い付かない。 修司の部屋には何も捨てるものが見つけれない。クズかごのゴミだって、修司が生きてた証拠だから。 ―ピンポーン― 画面に写し出された玄関ホールに居る男をみて茉莉子はビクッとした。恐い、気持ち悪い。 にい、早く帰ってきて! …あぁ、もう無理なんだ。 前髪で顔が見えない、痩せた男が立っている。 「どちら様ですか。」 茉莉子は冷静を装いインターホンの受話器を置いた。 「…お兄さん居る?…修司くん…。」 その男はボソボソと低い声を出す。 「どんなご用件ですか?」 「茉莉子…さん?」 「…はい。」 茉莉子は迷いながら返事をする。 「修司くんに頼まれて君を連れにきたんだけど…。」 「は?兄今家にいますから。」 茉莉子はそう言って受話器を置いた。 恐い。一人ってバレたら…。 恐い。怪しいっ。にぃっ…変な人がぁっっ! 「すいません。修司くんいますか?」 次の日の夜もその男はインターホンを鳴らした。 茉莉子は何も答えずに受話器を置く。 でもすぐにまたインターホンが鳴る。 「俺、藤原悠っていうんだけど…。」 「警察呼びますよ。」 「話を聞いてよ…。」 「なんですか。」 「…俺、修二くんの、大学の後輩なんだけど…最近連絡無いから。携帯ずっと、留守電だし…修司くん…て…。」 「兄は先月死にました。」
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