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現場検証に来たという警察二人は右手を包帯で巻いた男も連れてきて、昨日の夜の話を聞いて再現していく。 茉莉子は包帯が気になる。 昨日、出血がひどいと言われて救急車で運ばれた人。 「絶対捕まえますのでご安心ください。」 そう気休めを言って警察は帰っていった。 「…。」 置いてくんだ…。 茉莉子は横目で置いてかれた包帯の男を見る。 昨日助けてくれたんだから悪い人じゃないか…? まだまだ疑いの目を向ける。 「…手…大丈夫でした…?」 「腱がやられて親指以外もう動かすのは難しいらしいよ。」 「え…。」 その人があまりに淡々と言うので事の重大さが感じられない。 「俺、藤原悠っていうんだけど、修司くんに何か聞いてない?」 「聞いてないです。」 「そっか。俺ね、…修司くんに金貸してんだ。君返せる?」 「…いくらですか?」 茉莉子は眉をひそめながら聞いては見る。 「700万。」 「なっウソ!ウチそんな困ってません!」 男は紙を出してきた。借用書だ。 見間違えることができない癖のある修司の汚い字に、茉利子が中学の時に美術の授業で作った印が押してある。 「本物だよ。」 「…そんなお金無い…。」 「金は要らない。」 涙目になった茉莉子に悠は静かに言う。 「何…。」 「同居させて。今日から。」 「は…。何言ってんですか…ダメです。ここ出ていくし…。」 「家賃は俺が払うよ。」 「…何がしたいんですか…?」 「修司くんに頼まれてんだよ。あんたを一人にしないで欲しいって。知り合いん中で一番俺が金持ちで余裕があるから。」 「…金持ちなの?」 「そこそこ。君を養うくらいなら。」 「…別に一人で大丈夫です。」 「…。ここ、離れたくないでしょ?引っ越すなら修司くんの物捨てなきゃいけなくなるし。」 「……。」 「それに、追い掛けるよ。金、返してもらわなきゃだし。」 「お金要らないって…。」 「同居したらの話だよ。」 「…。」 「俺の身の回りの世話してよ。困ってるんだよ。」 男は右手を挙げる。包帯を巻いている手。 「一日五千円。4年で700万余裕で返せるよ。」 「そんなの…あなたに何のメリットもないじゃない。」 「そんなこと無いよ。」 男は優しく、寂しそうに笑って見せた。
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