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奇妙な同居が始まった。 名前は藤原悠。 年はにぃの大学の後輩だから27から25歳? 何も知らない人、お互い初対面で始まった生活。 茉莉子は空いていた部屋を悠に提供した。 茉莉子は部屋に生活の場を作っていく悠に興味なさそうに振る舞い、悠も余計な言葉は発しなかった。 一週間もすると生活は落ち着いていた。 空いてた部屋は悠の部屋になったし、箸も食器もカップも歯ブラシもサラックスもシャンプーもリンスもタオルも。 「にぃの使えば…?」 茉莉子が声を掛けると悠は少し笑った。 「悲しくなるでしょ?」 (私が?あなたが?) 思ったけど聞かなかった。 私が悲しくなるからって意味なら…茉莉子は優しさを知るのが恐かった。 どんな人なのか分からないのにそこだけで悠を評価してしまうから。 修司が居ないと、人を見ることさえ出来ない。 全部。悠のテリトリーが作られていった。 茉莉子も大学に復帰した。 ずっと部屋に居て悠といるのが苦痛で外に出ざるえなかった。 「ずっと言おうと思ってたんだけどさ…。」 TVだけ鳴っている食卓で悠が言いづらそうに話しだす。 茉莉子は箸を止めた。 「…ご飯、固い…。」 「にぃはこのくらいが好きって…。私もこのくらいが好きなんです。」 「…そう。」 再びTVだけの食卓に戻る。 悠は左手にスプーンを持って食事を進める。 大学からの帰り道、途中のバス停を見てしまう。 今日はにぃ、残業? 定時上がりだと必ずこのバスに乗ってこの道を歩いて、夕食の買い出しに行くのに…。 そっか、死んだんだね…。 悔しいから今日はにぃの嫌いなワカメサラダにパイン入りの酢豚にしよう。 …あの人、好き嫌いあるのかな…。
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