出会いはパソコンの中

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『たった一言なのに、すごく救われたのはなんでだろう。』 こんな風にして、ユウとさとしとのメールのやり取りは始まった。 次第にそのメールのやり取りが楽しみになっていく。 仕事から帰り、パソコンの前でメールチェックする時間が待ち遠しい。 毎日、自分が抱えているたくさんの悩みを、誰かに聞いてもらう。 自分のことを何も知らない人だからこそ、できる相談もある。 言える意見もある。 たったそれだけなのに、ユウもさとしも、解決の糸口をお互いに求め、それぞれ解決の道に進んだ。 さとしは、同棲している彼女に別れを切り出し、そのショックで精神的な病を患った彼女への対応に悩んでいた。 メールの内容から、さとしは優しすぎる男性だとわかった。 ユウは自分の経験も踏まえ、きれいごとなしに、率直に自分の意見を伝え続けた。 頑張れとは言わなかった。 頑張るなと言い続けた。 顔すら知らない人だけれど、いつの日か、お互い心の拠り所になっていた。 ユウが仕事で忙しく、しばらくメールを返せずにいた時のこと。 とりあえず心配かけてはいけないと、 『返事が出来なくてごめんね。また時間が出来たらゆっくり返事書くね。』 とだけ、さとしにメールを送った。 その翌日、 『ユウさんからのメールだったら、1日100通でも、100日に1通でも嬉しい。 だから、無理しないでね。』 と返事が返ってきていた。 なんて素敵な言葉なんだろう。 ユウは、いつしかさとしに会ってみたいと思うようになっていた。
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