現実の世界で。

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でも勇気がない。 もちろん、世の中で頻繁に起きている出会い系サイト事件の危険は、さとしとの間ではあり得ないのは確信していた。 たかがメール、されどメール、ユウはさとしを信じていた。 信じられる要素がさとしにはあった。 でもやっぱり勇気がない。 会ってしまって、この関係が壊れるのが怖い。 時を同じくして、さとしもユウと同じ事を考えていた。 『会ってみたい。ユウさんの生の声が聞いてみたい』 でも、この一言が言い出せなかった。 言って引かれるのが怖い。この関係が壊れるのが怖い。 ある日、さとしの彼女が自殺を図った。 幸い命に別状はなかったが、彼女は入院をした。 さとしは自分のせいだと、自分を責めた。 そんなさとしにユウは初めて、自分の携帯メールアドレスを教えた。 『しんどかったいつでもメールしてきて。 パソコンだとタイムラグがあって、リアルタイムでさとしを元気付けられないのが辛い。』 しばらくして、ユウの携帯に知らないアドレスからメールが入った。 すぐさま、さとしだとわかった。 『ありがとう。ユウさんのメアドは俺の御守だよ。』 こうして、2人はパソコンの中から抜け出した。 携帯の中で会う日々。 いつの間にかお互いを呼び捨てで呼ぶようになっていた。 そんな日々が続き、数ヵ月後。 『会いたい。 突然切り出して、ユウに嫌われるのは覚悟してる。 でも、自分の気持ちは正直に伝えたかったから。』 さとしからのメール。 『私はさとしを嫌わないよ。とっても嬉しい。ありがとう。 でも、私こそ実際会ったら嫌われちゃうかも。』 そんなやり取りから、お互い会いたい気持ちに嘘は付けず、 勇気を出して、実際会う日が決まった。 何の縁か、さとしとユウの家は車で20分程度、同じ町に住んでいた。 二人は、その町で1番大きな公園の1番大きな木の下で待ち合わせをした。
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