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『ユウ?』
『さとし?』
『お待たせ。』
初めての会話は、こんな調子だった。
二人は、不思議と、初めて会う感覚が全くなかった。
昔から知っていたような、久しぶりに会うような、懐かしい、そんな感覚。
二人はメール以上にたくさん色んなことを話し、話し疲れるまで、喋った。
しゃべり疲れたところで、
『ふ~ぅ!』
ユウが芝生に寝転んだ。
『あ~ぁ!』
さとしも芝生に寝転んだ。
『こうやって空見てると、アホらしくなるね。』
『気持ちいいなー。気持ちが晴れてく。』
『ね~♪』
『ユウ?洋服汚れるよ?!』
『いいの、いいの。』
『髪に芝生付いてるよ。』
『いいの、いいの~。』
『ユウらしいね。ユウは俺が思ったとおりの人だったよ。』
『私も。さとしが思った通りの子で良かった。』
この日から、さとしはユウに恋をした。
しかし、ユウはさとしを弟のようにしか見られない。
ユウはさとしの気持ちに気付きながら、洋介への気持ちをさとしに相談し続けた。
それはユウ特有の、さとしへの優しさでもあった。
遠まわしに『私なんて好きになっちゃ駄目だよ。』そう伝えていた。
そんなユウの態度に反して、さとしのユウに対する気持ちは強くなっていく。
パソコンの中でもない、携帯の中でもない、生身のユウに、さとしは本気で恋をした。
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