現実の世界で。

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さとしは、『好きだ』とこそ言わなかったが、 一途にその想いをユウにぶつけてくる。 さとしは、 『俺はいつでもユウの味方だから。』 『ユウは俺の宝物だから。』 『俺はユウに救ってもらったから、今度は俺がユウを救う。』 『いつでも俺を頼って。俺はいつでもここでユウを待ってる。』 ユウにそう伝え続けた。 それはまさに直球。 ストレートに、恋の駆け引きなしに、いつも温かくユウを包み込み続けた。 ユウは、真逆の性格を持つ、この二人の4歳年下の男性の間で揺れた。 どう考えても、安心した幸せを与えてくれるのは、さとしだ。 でも、どうしてだろう。 いつも私を二の次にする洋介への想いを断ち切れない。 さとしは少しでもユウに近づこうと、大人の男を目指した。 服装も大人の男性っぽく路線を変えた。 ジーンズに黒のジャケット。 さとしは、大人の女性をかもし出すユウに少しでも近づきたかった。 ユウから呼ばれれば、いつでもどこにいてもすぐ駆けつけた。 酒の強いユウに付き合う為、飲めない酒を訓練し、少しづつではあるが酒に強くなった。 お洒落なレストランをリサーチし、ユウをそこに連れて行った。 さとしは、ただユウの喜ぶ顔が見たかった。 ユウが読んだ本は、ユウには内緒でこっそり購入し読んだ。 ユウが観た映画は、すぐ観た。 ユウが読んだもの、見たもの、全てを知りたかった。 さとしはユウの為に、努力し続けた。 仕事も頑張った。 ユウに認めてもらう為、仕事が終わった後、建築士の資格取得を目指して学校に通い始めた。 見事、一発合格で2級を取った。 次は1級を目指す。 そして、バイクの免許を取り始めた。 ユウとドライブをしている時、ふとユウが、 『バイクの後ろに乗ってみたいな。』 と言ったのがきっかけだった。 以前、さとしの友達とユウの友達の4人で飲んだ時、ユウはさとしの友達が乗ってきた原付に 『後ろ乗せて~♪』 と、さとしの友達の腰に手を回して乗り、嬉しそうにはしゃいでいた。 さとしは、ユウを後ろに乗せて走る自分の友達にヤキモチをやいた。 『いつか、俺がユウをバイクの後ろに乗せる。』 そう決めたのだった。 ユウはそんなさとしの努力に気付いていた。 ユウは、駄目だとわかりつつ、さとしの優しさに甘えた。 卑怯な女の生活は、既に始まっていた。
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