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その年のユウの誕生日。
友達優先の洋介のおかげで、ユウは最悪の誕生日を迎えていた。
洋介と別れた後、まっすぐうちに帰る気になれない。
行くあてがないユウは、気付くとさとしの家の前にいた。
さとしのアパートの駐車場には、運良くさとしの車があった。
さとしの部屋のインターホンを押す。
『は~ぃ。』
この優しい声に、ユウはいつも癒される。
『突然ごめんね。ユウだよ。』
『えっ?!』
さとしが急いでドアを開けると、そこにはユウが立っていた。
『どうしたの?』
『さとしの顔が見たくなった。』
『嬉しいこと言うね~。……あがる?』
男の1人暮らしの部屋に女性をあげていいものか、ユウに引かれてしまうか、と思いつつさとしは自信なさげに尋ねた。
『いいの?』
自分から押しかけたにも関わらず、この場に来て、ユウも遠慮していた。
今は1人暮らしとは言え、以前まで彼女と同棲していた部屋。
もし、その元彼女がこの部屋に来たらどうしようか。
自分が居た場所に、他の女性が入り込むことほど、イヤなものはない。
それはユウがずっと昔の恋愛で体験したことだった。
『もちろんだよ。良かった~、今日掃除して♪』
『掃除したの?さとしは、エライね。』
この日、初めてユウは、さとしの1人暮らしの部屋にあがった。
突然の訪問にも関わらず、男の1人暮らしとは思えない程、キレイに片付けられていた。
『私の部屋よりキレイ。私の部屋も掃除して(笑)』
『ユウがどんな部屋で暮らしてるのか見たいな。』
『洋服が散乱してるだけだよ。』
『とりあえずコーヒーでいい?お湯沸かすからちょっと待ってて。』
『あ、私ジュース買ってきたんだ。』
『さすがユウ!気が効くね。』
ユウは、居間の適当な場所に座り、部屋を見渡した。
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