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風でなびく草原に1人の少年、匠は寂しそうに座っていた。
誰か人の足跡が聞こえてくれば誰かはわかっているので振り向く。
「早いな…」
「人魚姫は撒いてきたんですか?」
少し愛おしそうに匠は自分の隣に座った慎に問いかけた。
慎はその問いかけに困ったように苦笑いしながらもぎゅっと優しく匠の手を握る。
「嫌がってたが一応は…」
「そりゃ、恋人と離れたくないから嫌がるでしょうね」
「お前こそ亜璃はどうした?」
笑われてムッとしたのか微かに眉間に皺を寄せながらも次は慎が問いかける。
匠以外の誰にも見せないような一面に匠は嬉しそうに笑み、握られた手を握り返せば相手の問い掛けに答えた。
「あいつは今日、白兎に呼ばれて朝からいませんよ」
自分と同じような事を言うと期待していたのだが見事に期待を裏切られれば次は何を言おうか考える。
「ならば…」
「もう、どうでもいいでしょう」
自分から仕掛けた事だがせっかく2人っきりで居るのに他の事を考えたくないので、匠は慎に告げると相手の手を握ってる手に力を込める。
「仕方ない奴だな」
匠が自分に何を求めてるのかわかったのか手を握ったままも片手を匠の頬に添えれば優しくその唇に口付けた。
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