蝶よ花よと呟き声

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木彫りの装飾が施された古めかしい扉に備え付けられた鈴の澄んだ音が響く。 客がもうすぐこの部屋に来るという合図だ。 わたしは特に何もせず、窓から外をぼんやりと眺めて待っていた。 扉が軋むような音を立てて開かれる。 姿を見せたのは若い男だった。 年の頃は二十二か三だろうか、まだ十六だとか、もう三十なのだと言われても納得してしまいそうな不思議な雰囲気を纏っていて、どこかぼんやりとした印象の顔立ちをしている。 男は椅子を掴むと、わたしの方へ近付いてきた。 何をするのかと見ていると椅子を窓の前に置いて座り、外を眺め始める。 しばらくは男に付き合って外を見ていたけれどそれほどおもしろい物があるわけでもなく、わたしはベッドに身を投げたした。
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