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わたしはいつの間にか眠ってしまっていたようだった。
目を開けると、男は飽きもせず外を眺めていた。
おかしな男だ。
わたしはよく外に視線をやるが、そこまで見ているような物は記憶にない。
「外をそんなに見つめて、何が楽しいの?」
耐えかねたわたしが声をかけると、男はこちらを向いて笑いかけてくる。
「君がよくこの窓から空を眺めているのを見るものだからなにか良いものが見えるのかと思ったのだけれど、私には見つけられないようだ」
自分を私と呼ぶこの男は、何も考えていないのだろうか。
別に見たくて見ていたわけではない、他にすることがないから眺めていただけだ、と言うと男は、
「ああ、そうだったのか。それなら君の寝顔を見ている方がよかったね」
などと抜かすのだ。
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