~ 解 凍 ~

7/21
前へ
/144ページ
次へ
10日8時12分。  狭間は、階段を上がっていった。  5F、刑事課。  鑑識を終え、報告書作成に取りかかっている川原係長の席に向かう。 「おはようございます」 「おぅ、ザマ。珍しいな」 「昨夜のダイオクの件ですか…?」 「何だ?」  川原は怪訝そうな顔で狭間を睨んだ。  総務の内勤ごときが首を突っ込むな。眼がそう言っていた。 「いえ、引き継ぎ書で見たもんですから」  川原は、狭間のうわずった声に警戒心を抱いた。 「言えねえな。…何か聞きたきゃ、上を通しな」 「いや、自分の知るところではないと自覚しております」  当然だが、ガードは鉄壁だ。  オマエと無駄な会話を交わしたところで、得られる情報などない――川原に見透かされている事を、狭間自身が痛感している。  まだ何かあるのか。  川原の無言の重圧が、狭間を萎えさせる。 「署内報のコメント、後ほど頂きに参りますので」 「分かってるよ。ちゃちゃっと書いてよこすから待っとけや」 「ありがとうございます。失礼します」  狭間は溜め息を飲み込み、席を立ち去った。
/144ページ

最初のコメントを投稿しよう!

531人が本棚に入れています
本棚に追加