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(夢…じゃねぇよな?)
昨日はいつの間にか眠っていたこともあって、あれは夢じゃないかと思っていた。だが、夢の中で見た女性が再び目の前にいる。
何でこんなにも気になるのかわからないが、俺はこの女性を以前から知っているような気がしてならなかった。でも、名前が思い出せないんだよな……なんというか、喉まで出掛かっているんだけど出てこないって感じがはがゆくて、俺は唸りながら頭を抱える。
「!!…誰かいるの?」
女性は俺の唸り声に気付いたのか、驚いた様子で辺りを見渡している。俺は自分の存在を教えようと声を出そうとするが、それは別の音に変わる。
∑ドスン
それはあっという間で、俺は給水タンクがある一段高い場所に居ることを忘れて落ちた。何だかデジャブを感じるのは気のせい……じゃねぇよな。
「君は……大丈夫?」
うっすらと目を開けると、心配そうに覗き込む女性の顔が至近距離で飛び込んできた。俺は突然のことに慌てふためき、その場から急いで離れるように起き上がる。
「確か、昨日も落ちていたよね…落ちるのが趣味なの?」
大人の雰囲気を醸し出している女性はクスリと笑う。しかし、その笑顔にはまだ幼い感じが少し残っているような気がした。彼女に見とれている自分に気付くと、慌てて彼女の言葉を否定する。
「いや、別に趣味ってわけじゃ……」
「じゃあ、何で上から落ちてきたの?」
「……声を掛けようと思ったら落ちただけだ」
「…とりあえず、貴方が変わり者だってことはわかったわ」
さっきよりもクスクス笑う彼女に俺は少し困った顔をしながら笑った。こうして笑うのはいつ以来だろうか…そんなことを思いながら、笑い声は止むことはなかった。
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