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久しぶりということもあるんだろう、確かに家族全員が揃った食卓はいつもより和やかだった。
外科医の父、内科医の母、看護師の姉……うちの家族は皆、医療従事者ばかりだ。となると、両親たちは家を空けることが多くなるわけで…当然、幼い妹に全ての家事を押し付けるわけにはいかない……となると、家事全般は必然的に俺へと回ってくるもんだから、こうして母さんが家にいる日は楽ができるから助かる。
「……それで?仁瀬はどうして食事中にぼんやりしてたのかしら?」
笑顔でそう聞いてくる母さんの言葉に俺は思わず咳き込み、驚いた妹は俺の背中を擦ってくれる。
「な、なんだよ突然…」
「あ、それはあたしも気になる!…好きな子でも出来たんじゃないの~?」
「えぇぇ!!そ、そうなの?お兄ちゃん…?」
「アホか…そんなんじゃねぇよ」
ニヤニヤと不適な笑みを浮かべる姉貴と慌てふためく妹に、俺は呆れ顔になりながら止めていた再び箸を動かす。
「そういえば、さっき担任の先生から電話があったんだが…どういうことだ?仁瀬」
「……何がだよ」
「最近、授業をサボりがちだと聞いたぞ?」
「………」
「まあ、別に無理に話せとは言わん…お前も思春期真っ盛り、悩みの一つや二つ……」
「別になんでもねぇよ……ごちそうさん」
親父の言葉を遮る様にそう言い放ち、俺は逃げるように部屋へ向かった。
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