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彼女に差し出された茶色の袋。
大型チェーン店のマークと名前が入っていた。
俺は冷や汗を首筋に感じながら、それをじっと見た。
「これは……?」
「あなたに必要なモノ。」
つっと冷や汗が伝う。
その感触に鳥肌が立つ。
バレたのか? 本当にバレたのか!?
俺は一瞬思考を止めた頭を左右に振り、無理矢理働かせた。
「隠さなくていいの。」
彼女はうつ向き加減にくぐもった声を出す。
空調が効いた喫茶店。
なのに俺の全身は目の前のアイスコーヒーが入ったグラスのようにぐっしょりだ。
「一緒にいれば分かるわ。お願い、これ使って?」
彼女はさらに茶色の袋を俺に近付けた。
彼女の手は小刻に震えている。いや手だけではない。その華奢な肩も震えていた。
俺の膝もずいぶん前から笑っていた。
膝の震えは大きくなっていく。
止めたくとも俺の意思ではどうにもならない。
俺はズボンの膝をぎゅっと握り、きつくまぶたを閉じた。
止めてくれ、俺はどうなろうと、この事を誰に言うつもりもないんだ!!
テーブルがカタカタ揺れて、彼女と俺のアイスコーヒーは波立つ。
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