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息が上がってきた。
俺の思考に白いモヤが漂い、その気の遠くなりそうな頭の片隅で俺は白旗を上げた。
もう……ダメだ……。
膝から力が抜けた。
どしんっと不吉な音を立てて俺は椅子に尻を着けた。
「……ぐっ……、はっ……!」
俺は声にならない声を出して机に抱きつくように悶絶した。
同時に彼女も糸が切れたように笑い出す。
「ぶっっっ! あはははははははははは、あはっ、あーはははははは!!」
我慢できないというように、机を激しく叩きながら、涙を流す。
そこまで笑うか。
「あー、もうっ。痛くて椅子に座れないからって、腰うかして我慢するのやめなさいよ。バレバレだから!」
体をよじりひーひー言って笑い続ける彼女。
茶色の袋をガシッと掴み、突っ伏したままの俺につきつけた。
「はい、ちゃんと塗りなさいよ。っていうか、それ、もう病院行った方がいいと思うわ。」
……行けるものなら行っている……。
だいたい彼女はどんな顔してこの薬を買ったのだろう?
俺は陳列棚からこいつを手に取る勇気もない。
「今度、中心が空いたクッションもプレゼントしてあげるわね。」
彼女は無邪気な笑顔を向けた。
小さな殺意が芽生える。
お前、声でかすぎ。
【秘密:おわり】
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