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「サクラ、僕の手に触ってくれる?」
小さな桜の木の下で、身長より少し上にいる少年に、萩が右手を差し出した。
「……触るの?」
「僕が実体を持たない君に触ることは出来ないけど、君の意思で僕に触ることは出来る筈だよ」
「うん……これでいい?」
サクラが萩の右手に自分の右手を軽く置いた。
「うん。じゃあ、そのまま離さないでね」
「……ところで、何するの?」
「僕の妖力を君に流す」
「……は?」
「君の妖力が弱すぎるからちょっと違和感あるかもしれないけど、我慢してね。いくよー」
「ちょっと待って、何を……――ッ!!」
突然、サクラが苦しそうに顔を歪めて蹲った。
何かに耐えるように歯を食い縛って、身体を小さく丸める。
「は、萩、大丈夫なのよね!?」
不安になった麗奈が萩に声を掛けると、萩は平然と頷いた。
「妖力が弱すぎて反動がキツいんだろうね。あ、手、離さないで。あと少し、はい我慢我慢」
「……小児科医みたいだな」
「子供の扱いには慣れてるよー」
「……サクラ君どう見ても子供じゃないよね」
麗奈が突っ込むと同時に、萩が「はいお疲れ」とサクラの手を離した。
「な、何だよ……説明も無しに、いきなり!」
肩で息をしながら木の上で器用に横たわるサクラに、萩がにっこりと笑顔で言う。
「やっぱキツかった? どんな感じ?」
「なんか、身体中ビリビリして……ねえ君、楽しんでない?」
「えー? まさかぁ」
「だってその顔……」
「サクラっ!!」
突然涼子の声が、サクラの言葉を遮った。
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