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「……涼子?」
サクラが振り返った。
「ずっと、会いたかった……変わってないね」
両手で口元を覆って目を潤ませ、涼子がサクラの元へ歩く。
「え、嘘、涼子」
「私……私、貴方に言わないといけないことがあるの……。謝らないといけない」
「……何?」
「私……」
涼子が両手を握り締めて俯く。
そして勇気を振り絞るかのように、顔を上げた。
「私、結婚するの!」
「……え」
「知らないのは貴方だけなの。貴方を裏切ったことになるんじゃないかって思ったら、彼を家に連れて来られなくて……ごめんなさい!」
深々と頭を下げた涼子を、サクラは見下ろす。
「馬鹿だなあ」
やがてポツリと呟いた。
「何で謝る必要があるの?」
その顔は、怒りでも悲しみでもなく、柔らかな微笑みだった。
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