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「もしかして、ずっとこのことで悩んでた訳じゃないよね?」
呆れたような、それでいて安心したような声。
「僕は君が一人ぼっちなんじゃないかって、ただそれだけが気になって仕方なかったんだ。あの時言ったよね、僕のぶんまで頑張れって」
「……うん」
「君を愛して生涯寄り添ってくれる人が出来たのなら、僕はそれで満足だ」
言葉通り、まるで満開の花のような笑顔で、サクラは微笑んだ。
「ありがとう……」
涼子の目から涙が溢れる。
サクラが手を差し出すと、桜の花びらが数枚風に舞って、涙に濡れた涼子の頬に張り付いた。
「あ、失敗。拭けないや、ごめん」
サクラが何をしようとしていたのかを知って、涼子は思わず吹き出す。
「ふふ……ありがと」
「ねえ。旦那さん候補、今度連れてきてよ」
「勿論。貴方を紹介するつもり。……貴方の『おまじない』がきっかけで仲良くなった、高校の同級生」
「へえ、会ってみたいな」
「彼、樹木医なの。だからもし貴方が調子悪くなったら、いつでも診て貰えるかもね」
「それはいいね」
「もしかしたら、貴方のこと信じてくれるかもしれない。植物と会話するのが彼の夢だから」
「あはは、ずいぶんメルヘンな人だなぁ」
サクラが声を上げて笑う。
「でも今、私は貴方と会話してる……」
涼子の言葉に、サクラも笑顔で頷いた。
「うん。そうだね」
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