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「あぁ、また失敗」
小さな家の庭で、一人の少年が座り込んで呟いた。
「なんでかなぁ……あとちょっとなのに」
悔しそうに呟いたのは、黒髪にグレーの瞳を持つ背の低い少年だ。
年の頃は10歳程度、膝まである長いコートを羽織り、白い毛糸の帽子を被っている。
彼は立ち上がり、手にした縄を見つめた。
そしてその真ん中を右足で踏み、握った両端を上に引いて、絡まった部分を伸ばす。
足を離して両足を揃え、跳ぶと同時に縄を回転させた。
しかし、一周半して縄が頭上にきた所で足が地に着いてしまう。
「……やっぱり、二重とびむずかしいです」
少年は諦めて縄を巻き、彼の師の元へ走った。
「裕ー!」
「んー?」
縁側から家の中に叫ぶ。
彼よりも背の高い金髪の少年が、段ボール箱を抱えて家の奥から顔を覗かせた。
「どした、宏? 二重跳びは出来たのか」
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